発達障害(ADHD:注意欠陥多動性障害)での受給事例

相談前の困りごと

幼少期から、物を集めてしまう、強い潔癖傾向があるなどの特性がありました。一方で学力は高く、高校卒業後は大学へ進学しました。
幼少期に発達障害の診断はついていましたが、大学進学を機にご本人の自立したいという強い希望から一人暮らしを始めたそうです。ご本人のお話では、「学校でも家でも、”これをやったらだめ”と言われることが多く、それができずに注意される、そんな押さえつけられる生活が嫌だった。学校が休みのときは、自分でラーメン作ったりしてたから、自炊もできると思って、親から独り立ちできるだろうと思っていた。」という気持ちがあったそうです。ご両親も特性面が強いため、一人暮らしすることに心配をしていましたが、自立したい本人の意思を尊重しつつ、週末実家に帰ってくるという本人の約束を条件として一人暮らしを許可されたそうです。
実際に大学生活が開始してみると、様々な環境変化が一度に起こりました。授業ごとに教室が変わることや、自分の決まった席がないこと、日によって授業開始時間が変わるなど、高校時代とは異なる環境で、周りに頼れる人がいない中手探りで環境に適応していかなければなりませんでした。また、一人暮らしを始めたことで、食事・洗濯・清掃などを自己管理するようになりましたが、特に時間や金銭の管理に困難が生じました。
昼間の疲れから夜ゆっくりする時間が長くなり、動画などを見始めると止まらなくなり、朝方やっと就寝するといった生活になりました。生活リズムが崩れ、大学に行かなければならない時間に行けないことが多くなり、単位を取りこぼすことが多くなってから、実家にも生きづらくなり家に引きこもるようになってしまいました。
「親に大学費用、生活費用を負担してもらっているのに、目的である大学に全く行けず、生きているだけで迷惑かもしれない。」と自分を追い込むようになってしまい、抑うつ状態が強くなりました。実家の両親が心配してアパートに行ったところ、表情暗く、体はやせ細っており、すぐに実家に連れ戻し学校に休学届を出しました。その後、実家に戻って療養することになりましたが、1年以上経過しても復学することができませんでした。退学したとしても、すぐに就労することは難しいと考えたご両親から障害年金の手続きを勧められ、請求を検討することになりました。

 

傷病名

発達障害 注意欠陥多動性障害(ADHD)

 

請求時の年齢・性別・就労状況

20代 男性 学生(休学中)

 

請求の種類

初回裁定請求

 

社労士に相談したきっかけ

曖昧な指示を受けると混乱してしまい、説明の内容を自分が納得できるところまで理解しないと、次の行動に移すことが難しいという特性がありました。そのため、市役所などでも、一度の説明では理解できず、何度も説明を受けることがあったそうです。
一方で、取り組むきっかけができると集中して一気に手続きを進められることもありますが、途中で一度止まってしまうと、その先に進むことが難しくなってしまいます。また、こだわりの強さから、ひとつのことが完璧に進められないと、次の作業に着手できないといったこだわりから、なかなか作業が捗らないところがあり、一人で手続きを進めるのではなく、誰かに進め方を確認してもらいながらでないと、手続きを完了させることが難しいと感じていたそうです。

サポートの内容

発達障害については、幼少期から現在までの生活状況や特性の現れ方を整理することが重要になるため、ご両親にもご協力いただき、幼少期のエピソードを詳しく聞き取りました。
請求するご本人に、生まれたばかり頃の記憶がないことが一般的で、また、障害福祉とのつながりは、お母さまが主体となって手続きを行っているため、どのような支援を受けていたかご本人が把握することは難しいです。このような点は、ご家族から協力を得ながら聞き取りを行い、診断書を作成する医師への情報提供をおこないます。
また、ご本人からは、小・中・高校時代に起こった生きづらさ、例えば人間関係での悩みや学習上の悩み、そして一人暮らしを始めてから、特性によって日常生活にどのような支障が生じたのかを具体的にうかがいました。
さらに、主治医の先生には、一人暮らしをする場合に日常生活でどのような困難が生じるのかを具体的に整理した資料を、診断書を作成する際の参考資料として提出しました。

最終的な受給結果

障害基礎年金2級(年額約80万円)

 

受給決定後の生活・心理面の変化

障害年金の受給が決まったことで、経済面や将来に対する不安が軽減され、やがて復学に向けて前向きな気持ちを持てるようになったそうです。
また、病歴・就労状況等申立書を作成するために、これまでの生活状況や困っていたことを一緒に整理する中で、現在の自分にとって一人暮らしを続けることは難しいということにも気づかれました。
その後、相談支援専門員さんと繋がり、大学の近くにある精神障害者向けのグループホームを利用し始めたことで生活が安定し、復学することができました。そして、最終的には大学を卒業することができたそうです。
就職に向けての課題もあり、今後も周囲の協力を得ながら前進をしていかなければなりませんが、半ばあきらめていた大学卒業が実現できたことは大きな喜びと、少しの自信につながったとのことでした。一人ではなく、誰かに伴走してもらいながらであれば乗り越えられる小さなステップを、誰かと一緒に乗り越えていくこと、その考え方を身につけられた大学生活の経験は、大変苦しい時期もあったと思いますが得られるものも大きかったと思います。今後も福祉と医療の専門分野から助言や支援を受けながら、少しずつ就職活動も進めてもらいたいと思います。